英国の不動産ファンドの解約凍結問題について

英不動産ファンドの凍結相次ぐとのニュースについて

・英国のアビバやスタンダード・ライフなどの不動産投資ファンドが、EU離脱決定を受けた投資家からの償還請求により、解約を凍結しているとのニュースが出ています。
・実際に、これらのファンドのキャッシュ・ポジションはさほど多くないはずであり、解約請求が多くなれば対応できないのは当然かと思います
・問題は、これらの記事がリーマンショック時の「パリバ・ショック」を想起させようとする意図(悪意)を持っているように見える点です。
・パリバ・ショックは、パリバ系のRMBSを用いたファンドで、RMBS市場の混乱により時価を算定することが困難になった為、一旦売り買いを停止すると発表したことが一義的な「ショック」です。
・本質的には、当時レポの担保の中心として用いられていた「RMBSの時価がわからない」ということが問題であって、それによりレポ市場が機能不全に陥り、短期金融市場全体がおかしくなり、ホールセール・ファンディングに依存していたリーマン等の金融機関に資金ショートという問題が起きたことにあります。これがリーマン破綻の主因でもありました。
・今回、問題なのは解約請求が多すぎて手持ちのキャッシュで対応できないこということであって、筆者はファンドでは良くある事象かと感じています。また百歩譲って価格が不明なのは不動産価格であって、それで短期金融市場がおかしくなることはない訳で、基本的に大変だぞ~って言いたいメディアの悪意を感じています。


1.ファンドの凍結に関するルールは?

Investment Associationによると、英国FCAによって認可されているファンドの凍結(Suspension)が出来る場合は以下の4つの状況。

1.自然災害
2.流動性に問題がある際<<今回はこちら。
3.運営に関わる重要な主体(Fund ManagerやTrusteeなど)の事業が閉鎖した場合。
4.ファンドが閉鎖、または別のファンドによって買収した場合。

凍結に踏み切る前に、考えうる全ての代替案を考慮し、凍結する場合も期間を最小限にし、一時的でいけないとしている。

FCAハンドブックを見ても、特別な状況という表現があるが、閉鎖の期間含め具体的な条件はない。つまり、他のファンドも凍結の流れに追随する可能性がある。

参照リンク:
http://www.bbc.com/news/business-36708844

https://www.theguardian.com/business/2016/jul/05/commercial-property-fund-freeze-all-you-need-to-know-standard-life-aviva

https://www.handbook.fca.org.uk/handbook/COLL/7/2.html?date=2016-06-17

2.他にはどんなファンドがあり、凍結が続くのか?

(ガーディアン紙より)Hargreaves LansdownのLaith Khalaf氏によると、他のメジャーな不動産投資信託は以下の通り。

M&G Property Portfolio £4255.0m *本日解約凍結*
Henderson UK Property £3477.2m
Aberdeen UK Property £3424.2m
Standard Life UK Real Estate £2911m *昨日解約凍結*
Legal & General UK Property £2494.7m
Aviva Investment Property Trust £1842.4m *昨日解約凍結*
BlackRock Global Property Securities Equity Tracker £1053.7m
Schroder Global Real Estate Securities £588.3m
Kames Sterling Property Income £500.8m
Royal London Property £402m

参照リンク:
https://www.theguardian.com/business/live/2016/jul/05/mark-carney-to-outline-bank-of-englands-brexit-stability-moves-business-live

現在の売りはWealth Managerを通じた個人マネーの流出がメイン。個人マネー(Non-professional)は解約を短い事前告知期間で行うことができるため。

3.不動産ファンド全体の規模と、これからの影響は?

・GBP35BNがこのようなファンドに投資されているとされ、英国商業不動産投資の7%を占めるとされている。

・住宅市場への影響:目下の影響は不透明。ただしセンチメントの波及が懸念。

・経済全体への影響:75%の小規模事業が商業不動産をローンの担保にしているとされ、この価値が大きく下がると、銀行ローンが問題になる可能性がある。

参照リンク:https://www.theguardian.com/business/live/2016/jul/05/mark-carney-to-outline-bank-of-englands-brexit-stability-moves-business-live

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