中国はトランプ政権に為替操作国として認定されるのか?の2017年2月外貨準備

2017 年 2 月末時点の中国の外貨準備は 3 兆 50 億ドルと前月末比で+69 億ドルと、野村及び市場の減少予想に反して小幅増加した(ブルームバーグ調査の中央値:2 兆 9,690 億元、野村:2 兆 9,620 億元)。為替評価及び利払い調整後の外貨準備高も前月比+189 億ドルと、1 月の同-494 億ドルから 16 年 6 月以来の
増加に転じた。
外貨準備の増加はやや予想外であった。1 月の活発なドル売り後、大規模なドル売りを続けて人民元の安定を図ることは予想していなかったが、中国人民銀行(PBC:中央銀行)の為替フォワードポジションが期限を迎える可能性があった。1 月末時点で、2 月に満期を迎えるドル売り/人民元買いポジションは 289億ドルだったが、2 月に外貨準備が小幅増加したことから、PBC は全額をロールオーバー(乗り換え)した可能性がある。この時期、1-9 ヶ月、1-12 ヶ月のドル/オフショア人民元デリバラブルフォワード・カーブが大幅にフラット(平坦)化しており、2 月にこうした動きがあった証左かもしれない。


とは言え、調整後の外貨準備増加は、一部の資本フロー統計の改善と整合的である。たとえば、(1)月間の純対内直接投資(FDI)は、8 ヶ月連続で資本流出超となった後に 16 年 12 月と 17 年 1 月に流入超に転じた(図表 2)。ただし、12 月と 1 月は、対内投資が拡大し、純対内直接投資は季節的に膨らむ傾向がある。



(2)17 年 1 月の決済通貨ベースの貿易収支黒字は 193 億ドル(中国国家外為管理局(SAFE)の直近データ)であり、16 年の月間平均である 148 億ドルと比べ、輸出業者と輸入業者の外貨需要が落ち込んでいることがうかがえる。純対内直接投資と同様、決済通貨ベースの貿易収支は 15 年より前は、1 月に季節要因に伴い黒字が拡大する傾向がみられた。
そして(3)国内(企業及び家計)における外貨預金需要は減少しており、オンショアの外貨預金から外貨建て貸出を差し引いた額は、統計が入手可能な直近 1 月に前月比-101 億ドルと、16 年 8 月以来の減少に転じた。
全体として、我々は外貨準備増加をそれほどの好材料とは評価しておらず、中国の純資本フローには引き続き課題が多いとみている。その点は、外貨準備統計発表後、人民元の動きが鈍いことにも部分的に反映されている。とりわけ、2 月の外貨準備から貿易収支と純対内直接投資を除くと、1 月の 1,050億の赤字に続き 146 億ドルの赤字であり、貿易及び純対内直接投資以外で多額の資金流出が続いていることがうかがえる。加えて、中国の民間部門は中期的かつ構造的に、現在は低水準にある外貨建て資産の保有を拡大させる意向であ
ると考えられ、中国は引き続き大規模なマクロ経済・政策課題に直面しているほか、汚職撲滅運動が続き、中長期的に人民元の柔軟性が拡大する中で人民元は引き続き割高であり、3 月にはさらに 103 億ドルのドル売り/人民元買いの為替フォワードポジションが満期を迎える(PBC が保有するドル売り/人民元買いポジションのほんの一部に過ぎない)と推定される。

さらに、資本規制強化が外貨準備が安定してきた一因かもしれないが、最終的には迂回策が見つけられ回避されるかもしれない。最近導入された対外投資規制措置は中国企業による海外進出への取り組みを阻害しているとの懸念を示す中国企業の発言が強くなっている。加えて、12 月末に国内外貨両替の制限を一
部強化し、その後 17 年初めに個人の外貨両替枠を年間 5 万ドルに設定した。
当面、3 月 16 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合や、とりわけ米国のトランプ政権の減税策の概要発表など(3 月半ば頃の可能性が高く、我々は国境調整税に注目している)、人民元に対していくつかの対外リスクも予想される。

またトランプ米政権は、1 月に一連のドル安容認発言の後、2 月に為替操作国に関する発言を弱めた。またムニュ―シン財務長官も 2 月 23 日の CNBC のインタビューで、米財務省は為替操作国の認定に当たり「過去と同様に」既存のプロセスを踏むことを確認した。
米国は半年に一度、米国財務省半期為替報告書を作成し、為替操作国の認定を判断する。前回 16 年 10 月の認定基準は以下の通りであった。
(a) 対米貿易黒字額が 200 億ドル超
(b) 経常黒字額の対 GDP 比が 3%超
(c) 持続的かつ一方的な為替介入額の対 GDP 比が 2%超

これらのうち、3 項目全てに該当する国は為替操作国に認定される。2 項目に該当する国は為替操作国の監視リスト入りする。
現状、16 年 1~12 月の経済指標に基づく野村の推定によると、現在監視リストに掲載されている国・地域(具体的には中国、日本、韓国、台湾、ドイツ、スイス)は、3 項目の為替操作国の認定基準には該当しない。次回の米財務省半期為替報告書は 4 月半ば頃に公表される予定である。

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